スポチャンNEWS

2019. 10. 7
「美術の窓」田邊会長の連載 第24回


「美術の窓」vol.433 2019年10月号 P82〜P83
矛と盾
 
 連載 第24回 大自然の息吹(いぶき)
 
 どっしりと身構えるような、迫力がある茶碗である。半筒型で真っ直ぐな胴、小さく削り出した極めて低い高台には端厳な趣がある。焼成中に窯から引き出して急速に冷却させ、漆黒釉を呈発させることで、この滋味深い黒色がかった風合いが生まれる。急冷するために窯から引出すときの鋏の跡が残ることから「引出し黒」ともいう。
 この抑揚のある口を見ていると、遠くの山稜をぼんやりと眺めているような穏やかな気持ちになる。そして、胴を流れる釉の表情は、山々を流れる川、命の源である水のイメージをも喚起する。時折覗いている土の色は広がる大地の存在を想起させる。武骨な茶碗に生命(いのち)棲まう大自然の息吹(いぶき)を感じさせているのが興味深い。
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